スコアアップの妙薬
理想のスウィング追求より、
心で上手くなる本
菊谷匡祐
◆ローカル・ナレッジ
辞書を引くまでもなく、“ローカル”が「ある場所の、特定の土地の、地方の、局部的な」などを意味する言葉で、“ナレッジ”が「知識」のことであることは、だれにもわかる。
この2つの単語を組み合わさって、「そのコースを知悉すること」というゴルフ用語になる。
用法としては、フェアウェイ左のマウンドの向こうは広いと思って打ったのに、谷間がくい込んでいてボールを落とし、思わぬ大叩きをしたような際、「ちぇっ、やっぱ、こういうトリッキーなコースはローカル・ナレッジがねぇとだめなんだよなぁ・・・・・」
とか、
コンペでホームコースのゴルファーが優勝したようなときに、
「ローカル・ナレッジのある奴には、所詮、勝てねぇよ」とかいうように使う用語である。
そこで問題がある。だれが考えてみても、ローカル・ナレッジの有無は、あるコースにおけるプレーに大きく影響すると、答えるであろう。そしてそれは正しい。
どこにどういうトラップがあるか、かしこにはとんでもないハザードがあるかを知ると知らないとでは、プレーの前提条件に計り知れないカンディキャップを生む。
にもかかわらず、ローカル・ナレッジがあることが、ゴルファーに決定的なアドバンテージを恵んでくれるかといえば、これが違うからゴルフは面白い。
ゴルファーなら、こういう経験が多少なりともあるのではないか。難しいといわれるゴルフ場で何度もプレーしてみると、最初にラウンドしたときが一番いいスコアで、それ以後、そのスコアがどうしても破れないというこが。筆者自身にもそういう例が多い。
井上誠一氏の手になるコースのひとつで、名作の誉高くかつ難しいといわれる龍ヶ崎CCで初めてプレーしたとき、無我夢中でやっていたら38・39の77であがれた。
しかし、以後、何十回と通っても、二度と70台でまわれなかった。むろん、ローカル・ナレッジはついてくる。あそこにはああいう窪みがある。こっちへ打ったら次打で松の木が邪魔になるぞ!とは、わかっているのだ。それでも、無心でプレーした最初を凌駕できない。
龍ヶ崎CCだけにとどまらず、紫CCすみれコースも、太平洋C御殿場コースも、富士小山GCも、烏山城CCもそうである。
なぜか?なぜこういう現象が生ずるのであろうか?だれが考えても、そのコースを知っていれば、ローカル・ナレッジがあれば、断然有利なはずではないか?
そのとおり、有利なのだ。有利なはずである。それは正しいのだ。
しかし、一方、ローカル・ナレッジが身について、スコアが悪くなるのもまた事実である。何より、現実が証明する。
筆者の龍ヶ崎CCについていえば、初めはただ無心に真っすぐ打とうと思っていたのに、このホールは右に打ってはまずいとか、ここでは絶対に左はだめだとか考えるようになってから、かえってローカル・ナレッジがあるために、伸び伸びとショットでなくなってしまったといえるであろう。
世の中、物は知らないよりも知っているほうがいいに決まっているが、知っているがために、行動が掣肘されるのであれば、むしを知識はないほうがましではないか?要するに、ローカル・ナレッジというのは、打たねばならないほうへボールが打てるゴルファーにのみ、絶大な効果が賦与されるのである。
■ローカル・ナレッジ■
所有していれば所有していないよりいいと思われがちだが、所有することによって自縄自縛に陥ることが多く、ボールも自在に打ち分けられない一般ゴルファーには、あるよりむしろないほうが絶対にいい知識のこと。
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