もっと深く、
もっと楽しく
「技術を磨くことより心の内奥に深く問い続けることが大切」
「自分の力を、甘くなく辛くなく正確に把握する。そこからすべては始まる」
結果だけを重視して、
意図を問わない態度をとるかぎり、
上達はとうてい望めない。
“ショットのつなぎ”
『ほどほどボールを打てる基礎的な技術を身につけているゴルファーであれば、ゲームの設計次第で目覚ましいスコアを実現することが可能だ』
この文章の絶好の証明となるような実例を紹介しましょう。
その日、私は友人とそのまた友人2人、出版社の重役と政財界の大物の主治医とラウンドした。
この仲間たちはいつもラスベガスという賭けをしているらしい。
バーディとパー3のニアピン(パーセーブで有資格者)だけのご祝儀にして、フロントナインに出ていった。
前半の9ホール、三者とも冴えるゴルフはできなかった。
友人が47、他の2人がともに46で、もちろんバーディはなく、
三者ともニアピンも果たせなかった。
名医が一度ワンオンしたものの、3パットしてしまい、
キャリーオーバーのまま午後に持ち越された。
昼食のとき、誰からともなく「午後はいつも通りでいくか」と言いだして、衆議一決した。
ベストボールのラスベガスで、ほかに「竿イチ」「砂イチ」に
グリーンの外からのチップインも報奨の対象になる。
こうして午後の勝負が始まったのだが、前半に悪かった友人が午後は調子を持ち直し、何と9ホールすべてをとってしまったのだ。
のみならず、ニアピンを前半の分も合わせて4つ全部、
さらにバーディ二発をもぎ取っていた。
しかも、あるまいことか、8ホール目で2人がプッシュをかけ、
ここでパー対ダブルボギーで友人に負けると、
最終ホールで重役が22ポイント全部、名医が半分の11ポイントを消しに出たのである。
結果は友人の勝ちだった。
ティショットを右のラフに入れたが、2打目をフェアウェイに刻み、アプローチにパーを賭けたが、ピン奥5メートルのパットが入らずボギーにしたものの(このボギーで37だった)、相手がフェアウェイからの2打目をバンカーに打ち込み、重役は一発で出ず、名医は3パットして勝負は終わった。
重役が45ポイント、名医が23ポイントの負けだった。
数ホール経過したところで、わたしは友人の圧勝で終わると確信していた。
相手の2人が力み力んでいるのに対し、友人は気合は入っているのにもかかわらず、まるで無理していなかったからだ。
いま目の前にあるボールをどこに打つべきかをよく考え、
そのターゲットに打つことだけに専念している様子が、
はた目にもはっきり読み取れたのである。
いわば、彼は「頭でプレーしていた」のだ。
それから2年、再び同じメンバーでラウンドすることになった。
コースは重役の本拠地、富士レイクサンドCCだった。
重役はわたしにこう言った。
「前回は、道化扱いされてさんざんコケにされたけど、今日は頑張りますからね」
「このまえ中部さんがコメントしてくれたことを拳々服膺して、退くときは退く、出るときは一気に出る」
(拳々服膺=人の教えや言葉などを心にしっかり留めて決して忘れないこと)
名医はこう言った。
「この半年ほど腰痛をやっていましてね。紺屋の白袴っていうやつ。やっとクラブが振れるようになったんだけど、再発するのが怖くて、力いっぱいスウィングできないのが残念・・・・・」
(紺屋の白袴=専門としていることについて、それが自分の身に及ぶ場合には、かえって顧みたいなものであるというたとえ)
そのかたわらで友人は、曖昧に笑って黙っていた。
・・・・・という次第で、今回は3人のプレーを追って、わたしなりの感想を述べてみようと思う。
結果からいってしまえば、スコアは友人が一番よく、ついで名医、重役が最も下だった。
ポイントの獲得数は、重役が14点、友人が9点、名医が4点という順である。
スコアとポイント数が一致しないところがラスベガスの面白い点かもしれない。
自分がトリプルボギーを打っても、他の2人がパーないしボギーないしダブルボギーで引き分けてくれれば、ポイントは奪われることなく、勝負は次のホールに持ち込まれるからだ。
そしてバーディや「竿イチ」「砂イチ」のエキストラの報奨が、思わぬ展開を呼ぶ。
425ヤード、打ち下ろしのスターティングホール、重役がいいショットを2つつないで、まずパーで1ポイント獲得した。
次の177ヤード、パー3で友人がピン横3メートルに乗せて「竿イチ」を宣言したが、そこから3パットし、罰金をとられた上、
ニアピンの資格を失った。
しばらく似たような展開が続いた。
驚いたのは名医のドライバーショットの飛距離の出ることで、
「腰痛が心配で、思い切ってクラブも振れない」
などと言っていたのに、どこやらのチタンヘッドの長尺ドライバーを、両ひざをスライドさせながら体いっぱいを使ってフルスウイングするのだ。
もう62歳だそうだが呆れた若さである。
ただし、ショットのつなぎが悪い。
グリーンを外した後の寄せで、いったい自分がどういう狙い、どこにボールを落とし、どういう転がりでカップに近づけるのかをはっきり意図しないまま、漫然と打っているようにわたしには見えた。
むろん、ご本人はなにも考えていないわけではない。
むしろ、頭の中でいろいろ考えたことが整理もつかないうちに、
あるいは考えることが多すぎるから逆に整理もつけられずに、
ショットに入ってしまうのかもしれない。
頭のよい人によくある典型の例だといっていい。
アプローチショットでは、状況によって打ち分けろ、などといわれる。
しかし、そんな技術は終始コースへ出ている人にして初めて可能なことで、余暇のゴルフを楽しむアマチュアゴルファーにできるはずもない。
プロでもトップアマチュアでも寄せの上手な人は、多彩なショットを駆使するよりも、SWによるピッチとか、7アイアンか8アイアンの転がしとか、得意の技で押し通すものだ。
考えてみるまでもなく、理屈に叶った方法で、いつもやっていることほど狂いはないのである。
そういうわけで、名医にわたしは、どういう打ち方でもよし、アプローチのご自分の型を決めてしまったらと、申し上げたい。
それだけでもラウンドで5打はスコアがセーブできるはずなのだ。
重役は、周りの仲間から
「フェアウェイでは哲学者の顔だが、グリーン上では賭博者の顔になる」
と言われているそうである。
ベットではいつも、パッティングで勝ちを手中にしているわけだ。
なるほど、彼のパットはよく入る。
この日、何と6ホール「竿イチ」を入れたのだ。
ストロークがいいとかいう以前に、何より集中力が凄い。
自分のパットは絶対に入ると信じきっている気配が、はた目にもわかる。
小さいバックスウィングから、パチンと強めにヒットする。
ホームコースで芝目も知りつくしているのだろうが、真ん中からカップに飛び込むのである。
「パットに法なし」
という言葉があるが、重役のパッティングを見ていると、
自信と集中力こそが秘訣なのだと納得させられる。
それに引きかえ、わが友人のパッティングは酷かった。
3メートルほどのバーディパットが6ホールもあったが、
入ったのはわずかひとつ。
それも507ヤードのパー5で、素晴らしいドライブと4ウッドのショットでグリーンのカラーまで持っていきながら、そこからのアプローチを2メートルもショートし、それをやっと入れたものである。
しかも残る5ホールのうち、3ホールで3パットを犯していた。
それでも16番のパー3で1オンし、2パットであがって、溜まっていたニアピン2個も含めて4ポイント、上がり2ホールをパーでさらに2ポイントを加えて惨敗を免れたのが、せめてものことだったが。
いずれにせよ友人はパッティングの練習をすべきである。
何もパッティンググリーンまで出かける必要もない。
自宅の居間で毎日5分ボールを転がすだけでいいのだ。
中部銀次郎
(><)
勝負や相手を意識せず、目の前の1打に集中しろということなのですね。
ドライバーショットに力はいらない、アプローチショットは得意技をしぼり、同じことをくり返しできるようにして、パターは毎日5分練習することが大事なんですね。
わたしもここ数ヵ月間、パターを自宅で毎日練習しています。
先日の芙蓉カントリー倶楽部の27ホールのプレーでは、
「竿イチ」が5回も入ってくれました。
やっぱり練習の成果だと思わざるを得ないですよね。
ki銀次郎
0 件のコメント:
コメントを投稿