――コース設計の心得――
私は日本の美しい自然の中でのゴルフ場設計の仕事に誇りを持っている。
この一生涯の仕事が安易な妥協で無になってしまう。
「井上のコースはこの程度か・・・・・。」と言われる。
そう評価されない為にも自分自身で常に納得のゆく仕事を厳選してきた。
井上誠一
第二章
“パー3ホールを彩る池と樹木”
ゴルフコースにはさまざまな変化が要求されており、各ホールは、その都度、趣を異にしたものにしなければならない。
攻めて難しいもの、易しいもの、面白いもの、そして、美しいものと味わいの変化を持たせる。
パー3ホールは、ことに景観美を盛り込んだものにする。
池や樹木がその要素になり、厳しいコースの中にあってのオアシスの役目を果たす。
この池や樹木は、プレーヤーにとっては美しい眺めとだけ考えてプレーするならば、何ら問題ないのだが、そのプレーヤーによっては、
大きなメンタルハザードともなることである。
仮にティグラウンドとグリーンの間が完全に池によってしめられているホールがあるとしよう。
この池はパー3ホールにおける戦略的意味を特に持っているわけではなく、美しいコース造りの一つの素材にすぎないのである。
つまりパー3ホールはティショットでグリーンに乗せるかピンを狙うかということがたてまえなので、
その途中に池があろうが谷があろうが、何ら関係ないわけだ。
ところが、この戦略的意味のない池に惑わされて、
池の中に打ち込むプレーヤーがいる。
池がないところで同じ程度の距離とグリーン周りの難易度のホールを攻める時には容易にオンさせることができるプレーヤーがいる。
池がないところで同じ程度の距離とグリーン周りの難易度のホールを攻める時には容易にオンさせることのできるプレーヤーが、
池を見たとたんに体の動きがぎこちなくなり、ミスショットをするのである。
このような場合、この池はメンタルハザードの役目を果たしているのであるが、プレーヤーは自ずから進んで不利な立場においこまれている。
パー3での池は美しい眺めとしてうけとめるべきである。
ただ、完全な池越えでない場合がある。
右から突き出ていたり、左から突き出ていたりというものだ。
このようなものの中には、美観と同時に戦略的意味を持っているものがある、池を避けて攻めるというルートがある場合のものである。
例えば、池が左から突き出ていて、ピンが左目に立っているという時、
ピンを直接狙うには、池越えになり、グリーンに乗せるだけだと
池越えにならなくても目的を達せられる。
この時の池は、戦略的意味があり、乗せるだけというのは逃げ道になるわけだ。
樹木の場合は、その大きさによっても感じが違ってくるが、
これも心理的な圧迫というかたちでプレーヤーに影響をおよぼすことになる。
また、樹木の高さの変化によって距離感を錯覚することがある。
ということは、コース設計者の考え中にも樹木の配置は、
美観の点と同時に距離の目安となる素材であることが含まれているので、
プレーヤーはこのような点に惑わされることのないように注意しなければならない。
パー3ホールの場合、距離感をしっかりつかみ、
それに合わせたクラブを使用することが肝心である。
そのためにも樹木の配置、変化からくる距離感をあやまることのないようにしなければならない。
グリーンを狙い、ピンを果敢に攻める時に距離を間違えたのでは、どんなによいショットをしても、目的をまっとうできない。
パー3ホールを攻める時は距離をしっかりつかみ、
他の余分なことに気を奪われず、
ピンを攻めることである。
井上誠一
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