緑にお遍路さんたち
ゆめ、ご油断召されるな。
芝の上のあなたは、裸なのですぞ!
(夏坂健)
“ゴルフの味も、豪放にして繊細”
― 中華の鉄人 陳建一
たとえば「鉄人」の場合、超過密スケジュールに追われて居どころが定まらない人生を送っているが、
「いかに忙しくても、第一秘書がいるから平気です」
彼が言う第一秘書とは人間に非ず、どこに行くにも影のように密着するキャディバッグの愛称で、
「ゴルフが好きとか嫌いとか、そうした次元は卒業しました。ゴルフは僕の人生に必要な伴侶そのもの。スコットランドの人たちのように、まるで呼吸するかのように毎日ゴルフがしたい。これが僕の理想です」
「性急、短絡的なゲームはすまいと心掛けています。おちょこちょいは実生活だけで十分ですから」
現在のハンディが12。(1998年ころ)
とかくシングルの入り口にいる者はスコアに執着するが、
大人(たいじん)悠々として焦らず、彼方の雲、梢を渡る風の音、ラフに咲く花など愛(め)でながら、
「よければよし、悪ければ忘れよう」
呟きも大陸的である。
ところが勝負どころのパッティングになると、先刻までのトボけた味はどこへやら、すさまじいまでの集中力を発揮する。
地形全体の把握、芝目の流れと傾斜、どの程度でヒットするか、
イマジナリーラインの組み立て、すべてが簡潔に手際よく行われて小気味良い動きに集約される。
ベン・クレンショー、トム・カイトの師匠であり、
ベストセラー『リトル・レッド・ブック』の著者と知られたゴルフ仙人、故ハーヴィー・ぺニック翁に、次のような言葉がある。
『パットの上手な人と食事をするように』
この言葉の意味は、完璧なパッティングが生まれるためには3つ要素が必要とされる。
即ち観察力、想像力、決断力である。
パットの上手な人は、とりわけ想像力が豊かであり、これは楽しい会話に欠かせないものだ。
洒脱な仙人は、このあたりの機微をさりげなく説いたのである。
しかし「鉄人」は厨房にあって至芸の美味を醸す人、共に食卓を囲むわけにもいかないので、ハーヴィー翁の名言の裏返し、
『料理の上手な人とゴルフをするように』
このように呟きながら、私は誘いの電話に手を伸ばす。
夏坂健
(><)
もう10年以上前のこと、夕方4時から立川伊勢丹の食糧品売り場で陳建一さんと一緒に仕事をする機会があった。
そのときもゴルフが優先で、現場に現れたのはギリギリでハラハラしたことを思い出した。
また私が「コーチ」として一番尊敬しているハーヴィー・ぺニックさんの名前が夏坂健さんの本に載せられているということは、やっぱり優秀なコーチなのである。
ki銀次郎
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