2018年3月15日木曜日

自分を信じる。自分を規制する。両方できるのが「強いゴルファー」です

日本ゴルフ界のレジェンド・倉本昌弘は自分を信じて自分を規制できるゴルファーが強くなるための近道だと語る。著書「本番に強くなるゴルフ」から、本番に強いゴルファーになるためのヒントをご紹介しよう。

自分を信じて自分を規制する
技術を磨くことは大切です。しかし、技術にこだわりすぎると、練習場ではいい球が打てても本番になると上手くいきません。だから、常に「心」を意識して練習することが大事なのです。ところが、こういう話をすると、「それは上級者の考え方であって、自分はスウィングが悪くて球が曲がるんだから、スウィングを直すことが第一なんだ」と言う人がいます。

確かに、球が曲がるからそうならないスウィングを身につけたいと考えるのは当然で、そういう練習も必要です。でも、ミスショットばかりが出る人だって、いいショットも出るはずです。その回数を増やすためには、ものの考え方でやらないといけません。

要は、練習の目的をスウィング作りだけに絞って「心」の問題をゼロにしてしまうと、一見美しく見えるスウィングが身についたとしても、そのスウィングを本番で生かすことができなくなってしまうのです。

本番では否応なく「心」が出てきて邪魔をします。だから、その対応策を持っていないと、技術を磨いたからといってナイスショットの回数が増えるとは限らない。技術を生かす練習をしておかないと、技術を磨く練習がムダになってしまうのです。そして、強いといわれる人ほど本番で実力を発揮できる能力が高いし、そのための練習もしているのです。

こういうことはプロレベルでも同じことが言えます。ゴルフが上手いけど強くない人というのは、「ゴルフ頭」がよくない。それは一般的な頭がいいとか悪いという意味ではありません。練習方法やマネジメントはもちろんですが、自分を信じることと同時に自分を規制することに頭を使っていない気がします。

常に基本に立ち返る。「心」を意識して練習する。「心」がなるべく出てこない技術を選び、ルーティンを大事にする。自分を信じて「心」が出てきてもやるべきスウィングをやりきる。そして、本番では自分のできることだけをやる。強いと言われない人は、そういうことができていません。言葉にすると、当たり前に聞こえるけど、強いゴルファーになるためには、それが一番大事で、逆に言うとそれしかないのです。

たとえば、片山晋呉は強い。ポテンシャルだけ考えれば、もっとすごい選手はたくさんいるのに、そういうプレーヤーが束になっても彼には敵わない。では、彼がいつも何をやっているのかというと、片手打ちだとか、逆(左)打ちだとか、ヒモを張ったパッティングの練習だとか、そういう非常にベーシックなものを何年もずっと続けているわけです。大リーグのイチロー選手が記録を達成したときに、「小さなことを重ねていくことが、とんでもないところへ行くただひとつの道だ」と言っていたそうですが、片山プロを見ていると「小さなこと」を続けていく大切さを改めて感じます。

そして、彼の場合、試合になったら自分ができることしかやらない。リスクの高いショットなんて絶対に選ばない。彼のそういう練習方法やマネジメント、つまり、自分を信じて自分を規制する考え方ややり方の中に強さのヒントがあると、私は思います。

「本番に強くなるゴルフ」(ゴルフダイジェスト新書)より

タイガー・ウッズの立ち止まる勇気。 「パーを拾い続ける積み重ねが大事」

「初めてみる笑顔だな」
 この写真を撮ったのはタイガー・ウッズの復帰2戦目となったジェネシス・オープン、2日目の最終ホールだった。
 米カリフォルニア州ロサンゼルス郊外にある名門リビエラCCの18番グリーン上。ウッズは残念ながら予選落ちとなったが、キャップを取り、大観衆に笑顔で応えた。
 その瞬間、ウッズの穏やかな笑顔が意味するたくさんの事柄が私の頭の中を駆け巡った。そして、彼のその笑顔を大勢の人々に見てもらいたいという一心で、私は夢中でシャッターを切った。

予選落ちして笑顔を見せるのは「初」?

 言うなれば、ジェネシス・オープンのウッズは「初」づくしだった。
 3週前のファーマーズ・インシュアランス・オープンで1年ぶりに米ツアーに復帰し、2015年以来「初」の予選通過を果たしたばかりのウッズ。
 今週のジェネシス・オープンとその舞台リビエラは、1992年に16歳だったウッズがアマチュアとして米ツアーに初出場した思い出の場所で、思い出の大会。だが、一度も勝利が挙げられなかったウッズはいつしかリビエラから遠ざかり、今年は2006年以来「初」の出場となった。
 さらに、次週のザ・ホンダクラシック出場も発表された。故障、手術、リハビリ続きだったウッズが2週連続で出場するのは、これまた2015年以来「初」のことになる。
 そのエントリーが発表され、「タイガーが来週も出るぞ」とジェネシス・オープンのメディアセンターがにわかに騒々しくなったちょうどそのころ、ウッズはリビエラで第2ラウンドをプレーしていたが、すでに彼の予選通過は絶望的だった。
 初日は5バーディー、4ボギー、1ダブルボギーと出入りの激しいゴルフながら1オーバー、72と踏ん張った。「愚かなボギーさえ減らせれば、リーダーボードを上がっていける」と予選通過に自信さえ覗かせていた。
 だが、2日目はティショットが左右に曲がり、アイアンショットは文字通りグリーンの前後左右に外れ続けた。「愚かなボギー」はむしろ増え、3バーディー、8ボギーの76。通算6オーバーはカットラインに4打も及ばず、予選落ちとなった。
 2日間でフェアウェイキープできたのは、28ホール中13回。グリーンを捉えたのは36ホール中16回。どちらも50%にも満たない内容だったが、ウッズが最後に見せたのは満たされた表情だった。
 予選落ちしても、穏やかな笑顔。そういうウッズの笑顔を見たのは、考えてみれば「初」だった。

立ち止まることが苦手だったウッズ。

 42歳という年齢になり、「人間が丸くなった」と人々は言う。それは確かにあるのだろう。でも、それだけではないはずだ。
 かつてのウッズは、立ち止まることが苦手だった。膝の悪化、腰の悪化を感じ、手術や治療の必要性を感じても、ゴルフ界の王者は常に走り続けたい、走り続けなければいけないと考えていた。
 戦線離脱の期間を最短に抑え、1日でも早く復帰するために、リスクの少ない小規模な治療や手術にとどめ、1分1秒を惜しむかのように闘いの場へ舞い戻った。
 焦っていた? 生き急いでいた? その積み重ね、そのツケが回って抜本的な治療の必要性に迫られた。
 それが昨春に受けた4度目の腰の手術。リハビリに時間を要したが、リスクがあった分、回復度も高く、それが復帰戦となったファーマーズ・インシュアランス・オープンでの予選通過につながった。
 そして今週は、自身が率いる財団(タイガー・ウッズ財団からTGR財団へ改名)がサポートするジェネシス・オープンに大会ホストとして出場し、来週は大陸を横断して2週連続で出場する。

「何年も僕にはできなかったこと」

 そんな日程が組めることは、走り続けてきたウッズが初めて立ち止まった決断が正しかったことの証。着実にネクストステップを踏んでいることの証だ。
「不満なこともあるけど、こうして試合に戻ってくることができて、ラウンド後は毎日、練習もできている。それは、ここ何年も僕にはできなかったこと。そう、大事なのは積み重ね。これからも積み重ね続けていきたい」
 なるほど。36ホール目で見せたあの笑顔は「積み重ねている」という実感の表れ。そう思って眺めていたからこそ、眺めていた大観衆もみな笑顔になったのだろう。

優勝争いだけがゴルフじゃないのだ。

 人生も、ゴルフも、復活のストーリーも、よくよく眺めれば、たくさんの小さなコマが連なって、その集大成が1つのドラマになる。
「みんなが忘れてしまいがちなことがある。サンデーアフタヌーンで起こることがすべてだと思われがちだけど、そうではない。大事なのは積み重ね。パーを拾い続ける積み重ねだ。僕はその積み重ねを、長い間、やってきている」
 サンデーアフタヌーンならぬフライデーの夕暮れどき。最後にそう言って、ウッズは再び笑顔を見せた。
 予選落ちしても、穏やかな笑顔――。それは、かつてのウッズなら見せるはずもなかったものだが、初めて見たウッズのその笑顔は、一歩一歩、踏みしめながら生きることの素晴らしさを表現しているようで、なんとも心地いい笑顔だった。
舩越園子



ゴルフ上達の分かれ道。「ブロック練習」と「ランダム練習」上手くなるのはどっち?

練習にはふたつのやり方がある。ひとつは、同じことをやり続ける「ブロック練習」。もうひとつは、様々なやり方を組み合わせる「ランダム練習」だ。かつてゴルフはダンプカー1杯分のボールを打たないと上手くなれない、などと言われたが……効率よく上手くなるためには、ブロック練習とランダム練習、どちらがいいのだろうか?
「9番アイアンの練習だけを1年続けた結果シングルになった人の話も聞いたことがあります。とくにビギナーにとって、普段の生活で似た動作のないゴルフスウィングを習得するためのブロック練習は非常に重要です」

そう語るのはプロコーチの堀尾研仁。地面に置かれたボールを、道具を使って体の90度左側に飛ばすゴルフは、他に似たものが少ない特異なスポーツ。その動きを体に馴染ませるために、ゴルフを始めたばかりの頃はひとつの番手の反復練習が効果的だ。とはいえ、100を切るレベルになっても、漫然と固め打ちをするのは危険だともいう。

「ブロック練習には、基本を作る、不安定要素を減らすというメリットもある一方で、いわゆる“下手を固める”ことにつながる危険性もあるのです。そうなると、ビギナー時に有効だったブロック練習が、かえってマイナスに作用し、その先の上達を阻害してしまいます」(堀尾)

100を切るレベルになったら、人にはよるがゴルフ場にもそれなりの数だけ足を運んでいるはず。そうなったら、練習場でもコースでのショットを想定したショットを練習すべきだと堀尾コーチは言う。

「コースに出ると、練習場のようにのびのびフルショットできる場面は以外と少なく、距離や方向をコントロールしながらのショットが増えますよね。そういった状況を想定し、1球ごとにターゲットを決め、クラブを変え、打つ距離も変えてランダム練習することで、ボールをターゲットに運ぶためのスウィングを身につけることができるんです」(堀尾)

堀尾コーチによれば、ブロック練習は「形を作る」、ランダム練習は「目標に球を運ぶ」という根本的なテーマの違いがある。つまり、実戦力を高めるのにブロック練習は有効ではなく、ひとつの動きの型を習得したり、動きを矯正するのにランダム練習はふさわしくないということにもなる。

ところで100を切ったゴルファーがやりがちなのが、さらなるレベルアップを目指してのアプローチのブロック練習。「今日はアプローチを重点的に練習するぞ!」と心に決めて、練習の半分をサンドウェッジで30ヤードを打つのに費やした、なんていう意識の高いゴルファーは少なくないはずだが、堀尾コーチは「これも、できればランダム練習にしてもらいたい」という。アプローチこそ、様々な番手、様々な高さをコントロールすることで、引き出しを増やすことができるからだ。

では、100を切ったらもうブロック練習は必要ないのかといえば、そう単純な話でもない。

「たとえば、スマホで動画を撮ったりして、自分のスウィングを客観的に見て、修正すべき箇所が見つかったとします。それを修正するために、意識して行うブロック練習には価値がありますし効果も期待できます。ランダム練習とブロック練習、どちらだけでいいということはないので、今の自分の状態を見極めて、必要な練習を行うのが大切ですよ」(堀尾)

春までに、スウィングの課題をブロック練習で克服するか、ベストシーズンのゴルフ場を想定し、ラウンドシミュレーションを兼ねたラウンド練習で実戦力を高めるか……是非、今の自分のゴルフと相談して、練習メニューを決めてもらいたい。
みんなのゴルフダイジェスト編集部