2016年12月26日月曜日

◆75でラウンドする90歳レジェンドコーチの言葉

(><)
(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)
ゴルフを真剣になさっている人であれば、非常に興味深い話だと思います。じっくり楽しんでください。
ki銀次郎

「ボブトスキ」の画像検索結果

御年90歳のボブ・トスキだ。トスキはティーチングプロの元祖とも言われている、まさに生ける伝説だ。現在も3オーバーでラウンドするというトスキの決まり文句は「オレはスターだ。黙ってオレの言うことを聞いていろ!」。

とても90歳とは思えないエネルギッシュでユーモアあふれる話術に圧倒され、すっかりトスキのファンになった。

「ベン・ホーガンをツアー会場の練習場で毎日1時間見て学んできたんだ」という言葉からキャリアの長さがうかがえるが、2005年に全米女子オープンを制したバーディ・キムに指導を行うなど、今もティーチング活動を行っている。

●忘れてはならない”感覚”
半世紀以上にわたりティーチングに携わってきたトスキ。レッスン中に質問をすると「今はオレのショータイムだ。黙って聞いていろ!」と怒られたが、トスキのお気に入りのイタリアンに招待してもらい2人でランチをした時に、怒られるのを覚悟してティーチングで最も重要なことは何かを聞いてみた。

「スイング理論は時代によって変わってくるものだ。時代によってクラブやボールが変わるし、コースも変わる。あの伝統あるオーガスタだってコース改造をするのだから、スイングが変わらない方が不自然だ」
ただホーガンの時代から変わらないものがあるという。
「ハンドアイコーディネーションという言葉を知っているだろうか? この重要性はいつの時代も変わることがない」

ハンドアイコーディネーションとは、目から得た情報を体の動きに連動させる能力のことだ。よくショートゲームのレッスンで距離感を磨くために、目標までボールを放ったり転がすようなトレーニングをするが、これはハンドアイコーディネーションを高めるためのトレーニングである。

「今は練習器具や計測器の発達で、いろいろなことが可視化できるようになった。スイングやクラブの動き、距離だって1センチ単位で測ることができる」


そう前置きした上で、トスキはこう続けた。
「ただ、プレーヤーは機械ではない。だからこそハンドアイコーディネーションを磨いて、感覚と計測の数値をアジャストする必要がある。今のコーチは、この感覚の重要性を認識できていないと感じる時がある」



●定量的なアドバイスが正しいとは限らない
数値を使った定量的なデータはわかりやすい。現状の分析に向き、対策を立てる際の材料となる。そしてトスキが言うように今は球筋やクラブだけでなく、スイングや体の動きも数値で可視化できるようになっている。

それをプレーヤーに伝えて、修正を行うことは容易だが、練習場でそれを修正できたとしても、コースで練習場の通りにうまくいくとは限らないという。

「ゴルフはコースで行うものだ。練習場でいくら正しく打てたとしても、コースでそれができなくては意味がない。バーディ・キムが私のところを訪ねてきた時もそうアドバイスをした」

キムは全米女子オープンを制した時は若干24歳だったが、すでにスイングは完成されたものだったという。

「スイングはよい。だから彼女に必要なのはコースに出てターゲットに対してどのように打つかだった。感覚を磨く事が必要だったんだ。メカニック(技術的な部分)と感覚のバランスをとって、より精密に再現できるようにすることが必要な事だと伝えたよ」

そして、トスキはコーチもプレーヤーとしての感覚を忘れてはいけないと語った。

「ヒロにもバーディー・キムと同じ言葉を送るよ。ドライビングレンジで行うことはもうない。いつでも60台が出せるレベルのスイングをしている。コースに出ろ!そこで感じるんだ」

アメリカではコーチングの指導プログラムに「常に選手に対して多すぎる情報を与えるべきではない」と書かれている。コーチの役割は情報の交通整理で、
自分が知っている理論をとくとくと語り続けるパートナーとなってはいけないのだ。

●キャリアの浅いコーチはビデオ好き?
アメリカでは経験の浅い若いコーチほどビデオや計測機器を多用しているように見える。テクノロジーを取り入れた方が最先端な感じがするし、生徒への説明も容易になる。かくいう私も、初めてのクライアントを指導する際はビデオや計測器を使いがちだ。

マット・クーチャーのコーチを務めるクリス・オコネルにダラスのレッスンレンジでアマチュアへのレッスンを見学させてもらったことがある。クリス・オコネルはビデオや練習器具を一切使わず、そのアマチュアを教えていた。

全くの手ぶらでレッスンする姿を見て、「いつもビデオを撮らないのか?」と質問をした。

「結局目で見たスイング分析の情報が正しい。音、ターフ、スイングリズム、球の飛び方。目で見て現状を確認することもできるだろ。それで十分な判断材料がそろう」

ベテランのコーチは最新の機材を用いず、自分の目でスイングを分析している。前述のコスティスや、ヘンリク・ステンソンらのコーチを務めるピート・コーウェンもビデオを撮ることはほとんどないそうだ。

「ビデオを使うより、自分の目を鍛えろ!自分自身に高性能分析機を搭載するべきだ」とはコスティスの言葉だ。

スイングを分析するための高価な分析機器を使用することは良いことだと思う。しかし、スイングを分析し、修正する知識やロジックがあってこそ分析機を生かすことができる。数値化されるデータの意味を理解し、問題の本質を読み解くことできなければ宝の持ち腐れでしかないのだ。そして、スイングをどのように修正していくかは分析機では対処することができない。人間にしかできないスイングの問題解決能力こそが最も大事なものなのだ。

●アマチュアが気を留めるべき点
プロの場合は、スイングがある程度完成されているのでビデオを見せることで不安にしてしまうこともある。こちらが伝えたかったものとは別の情報を取得してしまい、結果、修正するポイントにズレが生じてしまうこともある。

そのためコーチたちが大切にしているのはコミュニケーションだ。選手の課題や不安に思っていることを感じ取ることに時間をかけ、考えすぎたり、情報過多にならないように配慮する。

ただアマチュアの場合は、ビデオで自分のスイングを認識させたほうが良い場合が多い。プロのようにスイングの再現性が高くなく、今、自分がどんなスイングをしているのか把握していないことが多いためだ。 またスイングや体の知識がほとんどないため、 単純に言葉では伝えきれないという点も挙げられる。

中長期的にスイングづくりに取り組むのであれば、始める前と、取組中に定期的にスイングを撮ることをオススメする。レッスンを受け始めてもすぐにはスコアに結びつかないが、ビデオを撮ることで前進していると実感することができるからだ。

自分ごとではあるが、教えているアマチュアが修正されていく自らのスイングを見て満足そうな顔を見ることも、コーチの楽しみだったりもする。

◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。ゴルフ先進国アメリカにて米PGAツアー選手を指導する50人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を学び研究活動を行っている。早大スポーツ学術院で最新科学機器を用いた共同研究も。監修した書籍「ゴルフのきほん」(西東社)は3万部のロングセラー。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)

0 件のコメント:

コメントを投稿