2016年11月17日木曜日

ゴルフの見識

スコアアップの妙薬
理想のスウィング追求より、
心で上手くなる本

菊谷匡祐



◆レリーフ

牧童の遊びにすぎなかったゴルフと称する単純なゲームが、いつしか競技の形態をとるにいたって、成文化されたルールができたのは、記憶に残っているかぎりでは、1744年、スコットランドのリースにできた「ジェントルマン・ゴルファーズ」でのことだ。そのときのルールは、わずか13条だった。


その程度のルールで、住古のゴルファーたちはゲームを進めるのに、何の問題にも遭遇しなかった、あるいは、難題に見舞われても「ボールはあるがままにプレーせよ」という、ゴルフ本来の精神に照らして、そのままプレーし続けたらしいのだ。


それでも“進化論”を論ずる上では、いまに残るこの最古のルールにも、すでに2条にわたって「レリーフ」に関する条項がある点に、注意しなければならない。レリーフ、つまり「救済措置」だ。


その第1―第5条
「球が水中やじめじめした泥など汚物の中に入った場合は、球を自由に拾い上げ、それらのハザードの後方に球を持ってきてティアップ、任意のクラブでプレーすることができる。ただし、球を拾い上げたことに対し、相手に1ストロークの優位を与えなければならない」


いまのルールの「ウォーター・ハザード」と「カジュアル・ウォーター」にボールが入った場合の救済についての条項だが、ここで注意しておかねばならない点は、カジュアル・ウォーターの場合でも、救済を認める代わりにいまでいう1打罰が加えられることだ。


その第2―第13条
「そのゴルフ場保護のために設けられたいかなる掘割、排水溝、水路、さらに子どもがつくった遊び用のトンネルや穴、兵隊のざんごうなどは、ハザードとみなされない。そこに入った球は取り出して、ティアップしてアイアンクラブでプレーすること」


この条項が、今日のルールが「障害物」と想定しているものに関する救済措置を定めたものであることは、いまさら説明するまでもあるまい。


先日、あるコンペで、同伴競技者があり得べからざる事態に見舞われた。ティショットがちょっとまがり、林に飛び込んだ。キャディもOBではないというので、林に向ったのだが、なんとボールが。まだ
小さな植木を支えている竹竿の先端に、ちょこんと乗っていたのである。どうしてこんな奇怪なことが起き得るのか。真上からボールを落としても、直径3~4センチの竹竿の先端にはきちんと納まらないのであろう。


ここでルール上の問題が生じた。通常、木の支柱がショットの邪魔になるときは、ショットの障害にならない場所まで無罰で動かせる。が、この場合、ショットの障害にはならないのである。


竹竿の上のボールは、野球のようにほとんど横振りすれば、空振りする確立は大きいが、スウィングできないことはないのだ。それで、この同伴競技者はどういう処置をしたか?彼はアンプレヤブルを宣言し、1打罰を払ってドロップしたのである。


これを目にして、筆者は関心した。ルールが許していないのだから、彼の選択し得る行為は、空振りする危険・竹竿を折ってしまう危険を冒してそのままスウィングするか、罰を払ってアンプレヤブルにするしかない。


が、ふだんゴルフ場でよく目にする光景が、これとはずいぶん違うものであることは、ゴルファーならだれでも知悉するところであろう。


結局、「レリーフ」の導入によってルールが着実に複雑になっていく事実が、果たして「進化」なのか否かは、ゴルファー自身が決めることなのかもしれない。
■レリーフ■
ゴルフから苦しみを除去するために設けられた、ゴルファーの、ゴルファーによる、ゴルファーのための法措置のひとつ。

(><)
前回は“ローカル・ナレッジ”を掲載しました。今回は“レリーフ”、個人的に耳にしたことがなかった言葉なので、掲載しています。

ki銀次郎

0 件のコメント:

コメントを投稿