2016年8月17日水曜日

超一流プロゴルファーが実践する心の鍛え方 東洋経済オンライン

「わたしは毎年、メジャー大会で優勝することを目指しています。そのために役に立つかもしれないと思ったことは、新しいことでもなんでも積極的に採り入れることにしています」――。
これは、ある1冊の本の序文に書かれていたフィル・ミケルソンの言葉だ。


今年の全英オープン最終日。46歳のミケルソン40歳のヘンリック・ステンソン(スウエーデン)の激しい一騎打ちを眺めながら、私はミケルソンのこの言葉が寄せられていた1冊の本を思い出し、「ああ、あのメンタルアプローチの効果は本物なんだ」と感心させられた。

その本とは、米国の精神科医でスポーツ心理学者でもある
マイケル・ラードン博士が著した『Mastering Golf
Mental Gameのこと。

 ゴルフ メンタルゲームに勝つ方法

翻訳を進めながら「なるほど」とうなずかされる部分は多々あったが、その翻訳本『ゴルフ メンタルゲームに勝つ方法』(実業之日本社)が出た3か月後の全英オープンで、ミケルソンは見事な優勝争いを演じた。そこで、そのメソッドとはどういうものなのか、2回にわたってお届けする。広くメンタルトレーニングに関心を持つ人に、参考になるはずだ。

11打を評価しつつゴールを置き換える
自分のゴルフをさらにレベルアップするためにはどうしたらいいのか。そんな悩みを抱えていたミケルソンは、実弟ティム・ミケルソンを通じてラードン博士と知り合い、博士の教えに「夢中になった」とある。


痛恨の敗北を喫した2013年の全米オープンを振り返り、ラードン博士ミケルソンが惜敗したことより彼のゴルフの完成度が高い状態だったことに着目。「よい状態」をいかに維持し、高めていくかをミケルソンに説き、その1か月後のスコティッシュオープンと全英オープンの2週連続優勝へつながった。

11打を評価しつつゴールを置き換えるという博士のアイデアは、わたしにとってとても大事なヒントになったのです。ラードン博士が考案したメソッドは、みなさんのゴルフにとても役立つシンプルな手法です。

ゴルフをしているとき、頭のなかに浮かんでくるいろいろな思考を、どうやって整理し、プレーに役立てていくか。その答えは、この本にあります。考え方を変え、自信を高めることで、スコアアップできるのです。さあ、試してみてください」

ミケルソンがそう力説するラードン博士のメソッドの基本は「プレショット・ピラミッド」と「メンタル・スコアカード」2つだ。

「プレショット・ピラミッド」は、ラードン博士が発見して名付けた概念。その名の通り大きなピラミッドの形をしており、6つの心理的要素で構成されている(右下)。その6つの要素を採り入れ、順次ステップを踏みながらスイングやプレーを実行に移す方法であり、ラードン博士が提唱するメンタル強化のメソッドだ。

そして、それがどのぐらい実行できたのかを示すものが、通常のスコアカードとは別に記録する「メンタル・スコアカード」だ。ラードン博士「心は筋肉と同じ」だと言う。

心も鍛えれば強くなる。心を強化するために、まず博士が説くプレショット・ピラミッドを理解していただきたい。

プレショット・ピラミッドは、次の6つの要素で構成される。

1、姿勢

2、モチベーション

3
、コントロール

4
、最大化

5
、集中

6、プランニング

1
つ目の「姿勢」は、「あなた自身の心の哲学を見つけること」。かつて陸上競技の世界で打破は不可能と思われていた「1マイル4分の壁」がひとたび破られると、他選手たちも続々と「壁」を破り、新記録が更新されたそうだ。目指すものが不可能でも脅威でもなく、達成可能なものだと思えるかどうか。

「できない」「無理」というメンタル・バリアを生じさせないための秘策は、目標そのものではなく、そこへ到達するプロセスを考えること。「自分は年を取りすぎた」「もう若い人のようには打てない」といった固定されたマインドセットをいかにオープンマインドへ変えるか。


「自分なら目標を達成できると信じ切れることで、す
べてがうまく作用していく。その効率性の良さこそが
本当の自信なのです」

2
つ目の「モチベーション」は言葉通りだが、ラードン博士は「3つの層で構成されている」と説く。1は本能に基づくもの。第2は学習することで得られるもの。そして第3は心の底から湧き出す「なにかをしたい」という純粋な気持ち、いわゆるパッション(情熱)で、「それが人間を動かす最高のモチベーションになる」。

3つ目の「コントロール」では、ボールやゴルフをコントロールするためには、感情をコントロールすることが必要と説く。プレー中に感情が高まり、理性を失いそうになったら、まずスピードを制御することが肝要。歩くスピードも呼吸もスローダウンすると感情はおさまってくる。

そして「怒ってもいいんだよ」という許可をあらかじめ自分で自分に出してしまうこと。無感情なロボットのようになる必要はない。怒りのレベルや感度を落とすことさえできれば、それでいいと思うこと。多少の不安は決して害ではない。さらには、アンラッキーは「起こるもの」と自分に言い聞かせること。

◆小さなミスに激怒して崩れる人の対処法
ここで
ラードン博士は、プレー中にしばしば小さなミスに激怒して崩れるLPGA選手とのケーススタディを挙げている。彼女に「真っ赤に燃える石炭を手渡されたらどうする?」と尋ねると、彼女は「投げ捨てる。だって火傷しちゃうから」と答えた。

博士は「ゴルファーも真っ赤に燃える状態になってしまうことはあるが、それは次のショットに臨むまでの間だけにしなさい」と教え、彼女のキャディには「彼女の感情が静まるまでは次打のクラブを渡さないように」と頼んだ。その後、彼女の成績はみるみる安定し、初優勝を挙げたのだそうだ。さらに、プレショット・ルーティーンを一定に保つことも、メンタルコントロールができるシンプルで基本的な手法だという。

舩越 園子(東洋経済オンライン)

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