2016年2月4日木曜日

井上誠一のコース設計論と攻略ルート

――コース設計の心得――

私は日本の美しい自然の中でのゴルフ場設計の仕事に誇りを持っている。
この一生涯の仕事が安易な妥協で無になってしまう。


「井上のコースはこの程度か・・・・・。」と言われる。
そう評価されない為にも自分自身で常に納得のゆく仕事を厳選してきた。
井上誠一



最終章 距離感のつかみ方とその錯覚

~錯覚を誘うコースだて~

距離をしっかりつかむことと同時にコースをしっかりつかまなければならない。我が国のようにヒリーコース(※高低差が大きく、アップダウンの多いコース)が多いところでは、グリーンの傾斜が思わぬミスをおかすことがある。


フェアウェイの右に土手が続き、左に谷が続いているホールで、グリーンを平坦に造ったとしよう。そうすると、これを見たプレーヤーには、このグリーンが決して平坦には見えないのである。谷側のほうが上がって見える。


プレーヤーは谷側が上がっていると思ってパットしたら、その位置によって、長かったり、短かったり、左だったり、右だったりということになる。


これは一種の錯覚でヒリーコースの中にあって水平感を失っているためである。

また、打ち下しのホールでも平坦なグリーンを造れば、奥が上がって見える。このような条件の中でグリーンが平坦に見えたら、谷川の方が下がっているのであり、打ち下ろしの時はグリーンが下がっていると判断してプレーをしなければならないわけだ。


水平感を失った時に、その回復方法としては、コースのどこかにある建物を見ることである。コースがどんなにヒリーなところにあっても建物の柱は垂直であり、棟と水平であるはずだ。


高圧線の鉄塔なども水平感を保つためには役立つ。グリーン上の旗竿は、カップを切る時にさまざまな形になり、一定していないので、あてにしないほうがよい。


よく外国のプレーヤーなどが、グリーン上でパターをつって見ているのは、水平感覚をつかむ要素が含まれているのである。どんなに少ない錯覚もプレーの中に入り込んだのでは、よい結果は得がたい。


ティグラウンドの向きなども何気なくプレーしていると、とんでもない方にボールを打ち出すことになる。ルール上から、ティグラウンドの向きはグリーンの方向になどということがないわけで、それは必ずしもグリーンに対して向いていないこともある。またティマークも同じである。


プレーヤーは常に身の置き所をしっかりつかんでゴルフをすることである。

井上誠一

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