2014年9月5日金曜日

ゴルフ・プレー前夜に読むクスリ 夏坂健

レッスン書を読まなくてもうまくなる法




『あるがままを楽しむ』

これが本当のゴルファーである
心なき先行者が、グリーン上にスパイクの傷を残していった。
全英オープンに2度優勝したアマの名手、ハロルド・ヒルトンは、
背をかがめて子細にその傷を眺めている。
一緒にプレーしていたジェームス・ブレードが近づいて、
冗談を飛ばした。



「足跡から、犯人を割り出しているのかね?」
『いや、計算しているところさ』
不快極まりない凸凹であっても、ヒルトンは、綿密に計算して、
それを楽しんでいたとブレードは感心する。



普通ならまず不快を表わし、
クサった態度を見せ、できたらパターのソールで地ならしをしたいところだ。



その上、もしカップに嫌われようものなら、
「畜生!スパイクの傷跡め!」
たちまち責任転嫁の八つ当たり。



とくにちかごろは、キャディのせい、天気のせい、ライのせい
にする下品なジンブツが多すぎる。



ところがヒルトンは、傷跡によってボールがどう曲がるか
楽しんでいたというのだから、ケタ違いのゴルファーだったと思い知らされる。



1899年にブレストウィックで開催された全英アマ選手権の決勝戦。
のちに30歳の若さで戦死したフレディ・テイトは、
17番のバンカーにボールを入れてしまった。



通称「アルプス・バンカー」と呼ばれるだけあって、
木製の階段を下りて巨大な地底に立ってみると、
さながらアルプス山脈を仰ぎ見るほど前方がそびえている。



しかも、前夜の豪雨で大きな池が出現していた。
「救済規則で、水の外にドロップしたまえ」
役員が声をかけた。



テイトは靴をぬいで水中に入ると、ボールの状態をしばらく眺めていたが、
やがて対戦相手のジョン・ボールにこう言った。



『いっぺん、浅瀬からのエクスプロージョンを
やってみたかった。どういうことになるかワクワクするね』



テイトは水しぶきを上げてボールを打った。
白球はスローモーションさながらに、ゆっくりと舞い上がり、
はるか高い位置にあるピン手前2メートルにぴたりと止まった。



彼は2位に終わったが、この果敢な精神は、
いまもってゴルファーの鑑とされる。



救済措置に甘えず、「あるがまま」を楽しむ。
できそうでなかなかむずかしい話である。
夏坂健

(><)
「あるがままに打つ!」
この言葉を知らないゴルファーは多い。



更にルールも知らないから、自分に不利な場面に遭遇すると
やたらに球を動かしたがる。



一度球を動かすとクセになり、本当のゴルフの楽しさを知らないで
ゴルフ人生を終えていく人も大勢いるようだ。


「あるがままに打つ!」
ゴルフのすべては、この言葉に凝縮されている。
ki銀次郎

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