2015年1月6日火曜日

石津謙介の男のおしゃれ実用学



~窮屈袋~

“ズボン―この変な名前”


学者でもない私でさえも、ズボンを呼ぶ言葉をたくさん知っている。
まずその『ズボン』という言葉だが、考えてみると随分これはおかしな発音で、それをはく時の感じから何となくこう呼ばれたとすれば、ちょっとおもしろいが、これはどうもフランス語の『ジュポン』から出たものらしい。



しかしフランス語では、これはズボンのもう一つ下にはくもののことをいうらしく、ズボンのことは『パンタロン』というのが正しいようだ。



英語にも『パンタルーンズ』という言葉があるが、これは今のズボンの元祖で、昔の西洋の絵を見るとよくある例のもも引みたいなやつのこと。



このパンタルーンから『パンツ』というのができたらしい。
これはもっぱらアメリカだけで使われる言葉で、イギリスでは正式に『トラウザース』といわれているし、ドイツでは『ホーゼン』である。



もう一つおもしろい呼び名は、特に気軽にはくズボンで、いわば日本で替えズボンと呼ばれているようなスポーティなものを『スラックス』という。



スラックスという言葉そのものは『ダブダブのだらしなく垂れ下がった』という意味なので、あまり品のよいズボンのことではなさそうだ。



しかしイギリスにもこんな不精者むきのズボンもあるらしく『バッグス』という言葉があるくらいだ。



いわゆる、ダブダブの袋を二本はいたようだという意味で、これはオックスフォードあたりの大学生が、わざと折り目をつけないフラノのズボンをはいて粋がる癖があるとか。



わが国でも、昔の高校生が無理に帽子を破いてかぶったり、汚い恰好をしてバンカラ趣味を誇る風習があったのと同じことだろう。



もっとおもしろい話がある。
フランスにフィットナーグというズボンの隠語があるそうだ。
フェテというのはムチで打つことから、ムチで打つような音のおならをすること。



そのおならが通って外に出る通路がズボンということ。
凝った話ではある。





おならといえば、日本の奈良の方言ではズボンのことを、きゅうくつな袋といっていたとか。
初めてこれをはいた人が、何てこれは窮屈な袋なんだろうといったためだろう。
とにかく、このズボンにまつわる話はみんなおもしろい。
石津謙介

(><)
1982年、新卒で紳士アパレルメーカーに就職したときに、ズボン、スラックスやパンツという呼び名は知っていても、トラウザースという名称は知らなかった。



それまでスーツといえばウール100%が主流だった。ネイビーやチャーコールグレーのスーツに、ホワイトカラーかせいぜいブルーカラーのシャツにエンジのネクタイという、サラリーマン独特のファッショを、ドブネズミファッションなどと揶揄されていた。



そんな中、夏物の素材としてウールにリネン(麻)を混ぜた混紡とよばれる生地やリネン100%のスーツやジャケットも登場したのが1980年代である。



ウール素材とちがってリネンは“皺”が出る。その皺の風合いが男の色気を表現したような記憶がある。
色はリネンそのものの生成やホワイト系が多かった。



1980年代は、DCブランドという新たなジャンルのファッションも現れ、この頃が戦後の第二次ファッション革命の時代だったと思います。

磯辺銀次郎

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